骨粗しょう症は、加齢などにより骨の強度が低下することで、骨折しやすくなる病気です。骨の密度がスカスカでもろくなるうえ、筋力やバランスも低下するため、軽い転倒や日常の動作でも骨折が起こりやすくなります。
高齢の方に起こりやすい骨折は、身体だけでなく心にも大きな影響を及ぼします。自立度が下がることで歩行能力の低下や認知症の進行につながるだけでなく、外出や趣味が制限され、気持ちが落ち込み生活の質が下がってしまうこともあります。
とくに大腿骨の付け根(大腿骨近位部骨折)、背骨(脊椎圧迫骨折)、骨盤の骨折が増加傾向にあります。これらは長期間の安静や手術が必要になるため、寝たきりの原因となることがあります。
痛みや体の不自由さによって外出や趣味が制限されると、気分が沈みやすくなり、精神的な落ち込みを引き起こすことがあります。
一度骨折すると再び骨折を起こしやすいため、高齢者にとって骨折は「一度きりのけが」ではなく、その後の生活の質や健康寿命に深く関わる重大な出来事です。こうした骨折を防ぐには、骨粗しょう症を早期に発見し、適切な治療を始めることが大切です。
骨粗しょう症は、加齢以外にもさまざまな要因が関わります。
骨の強さ(骨量)は成長期から20代にかけてピークを迎えるため、この時期の生活習慣が将来の骨の健康を大きく左右します。過度なダイエットや偏った食生活は、カルシウムやビタミンDの不足を招き、若い世代でも骨量を低下させることがあります。
女性の場合は、閉経によって女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、骨の新陳代謝が崩れることも要因となります。また、喫煙や過度の飲酒、運動不足、ステロイド薬の長期使用なども骨を弱くする要因として知られています。
このように骨粗しょう症は「高齢者だけの病気」ではなく、生活習慣や体質、治療薬の影響などによって、若い方でも起こり得る病気です。だからこそ、年齢に関わらず骨の健康を日ごろから意識することが大切です。
当院で行う検査は、腰椎・股関節を撮影するDEXA(デキサ)法と呼ばれる骨密度検査です。
腰の骨(腰椎)や太ももの付け根(股関節)をX線で撮影し、骨の強さを正確に測定します。検査はベッドに横になるだけで、痛みもなく短時間で終わります。放射線量もごく少なく、体への負担はほとんどありません。
DEXA法は、骨折のリスクを予測するうえで信頼性の高い方法とされており、骨粗しょう症の早期発見や治療方針の決定に役立っています。
当院では、多くの方にご自身の骨の状態を知っていただけるよう、初回のみワンコイン(500円・税込)で計測できる“骨ドック”をご用意しております。予約なしでも検査可能ですので、受付にお声がけください。
骨粗しょう症の診断や治療の開始は、骨密度を評価する指標であるYAM値を基準に判断されます。YAM値は「若い健康な人の骨の強さ」を100%としたときに、自分がどのくらいあるかで表されます。一般的には、YAM値が70%以下になると「骨粗しょう症」と診断され、治療が必要とされています。また、70~80%程度でも骨折の危険が高い場合には、早めに治療が検討されます。
骨粗しょう症の治療の中心となるのが薬物療法です。骨を強くする薬にはいくつかの種類があり、骨の状態や年齢、合併症の有無などに応じて使い分けます。
| 骨の破壊を抑える薬(骨吸収抑制薬) | 骨を壊す働きを持つ「破骨細胞」の働きを抑え、骨が減っていくのを防ぎます。 |
|---|---|
| 骨の形成を促す薬(骨形成促進薬) | 骨をつくる「骨芽細胞」の働きを活発にして、新しい骨を増やします。 |
| 骨質を改善する薬 | 骨の質そのものを改善し、骨折のリスクを減らす効果があります |