脳卒中と脳血管内治療

脳血管内治療とは

脳血管内治療は、脳卒中などの脳の血管の障害に対して行われる治療法です。

脳卒中は、血管が詰まる「脳梗塞」、血管が破れる「脳出血」、脳動脈瘤が破裂する「くも膜下出血」の総称です。

脳卒中の主な要因は、高血圧や高脂血症、糖尿病などにより、血管が硬くなり詰まりやすくなる動脈硬化です。

脳卒中を発症すると命に関わるだけでなく、助かっても重い後遺症が残る可能性があり、その後の人生を大きく左右します。一度破壊された脳細胞は、元に戻ることがありません。このため、脳卒中を疑ったら速やかに治療を開始し、脳のダメージを抑えることが大事になります。

脳血管治療は、細い管(カテーテル)を手首、肘、足のいずれかの動脈に挿入し、脳動脈瘤などの病変まで到達させ行う治療のことをいいます。外科手術をせずに血管内カテーテルを介して治療するので、身体への負担が少なく早い回復が見込めるため、入院期間も少ないのが特徴です。

脳卒中の症状

脳卒中は突然発症し、発症から数分で脳細胞の壊死が進んでいくため、早急な対応が必要です。以下のような症状が現れた場合、速やかに医療機関を受診してください。

突然の経験したことのない激しい頭痛
ろれつが回らない
片方の腕や脚に力が入らない
歩行困難やめまい
片方の目が見えない、二重に見える
顔面・手足の麻痺やしびれ
激しい胸痛(心疾患による脳梗塞)
吐き気・嘔吐

tPA療法・血栓回収療法(急性期再開通療法)

急性期再開通療法とは、脳梗塞が発症してからできるだけ早期に、詰まった血管を再開通させて脳への血流を回復させる治療法です。早期に治療を開始することにより、脳の損傷を最小限に抑え、後遺症を軽減することを目的としています。主な方法として以下の二つがあります。

血栓溶解療法(tPA療法) 発症から4.5時間以内に行う急性期脳梗塞に対する治療法です。血栓を溶解させる組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)という薬を静脈内に投与し、血流を回復させます。
血栓回収療法(機械的血栓除去術) 血栓回収療法は、条件を満たしていれば発症から24時間以内に行うことができます。カテーテルの先についたステントリトリーバーというデバイスや吸引カテーテル等を用いて直接血栓を絡め取り、回収します。

脳血管内治療の対象となる疾患

脳動脈瘤 脳の動脈にできるこぶ状の膨らみで、破裂するとくも膜下出血を引き起こします。コイル塞栓術などで治療します。
脳梗塞 急性期脳梗塞では、血管内治療が非常に重要です。プラークなどの血栓が脳の血管を閉塞している場合、血栓溶解療法、またはカテーテルによる血栓回収や血管内ステントの挿入により血流を回復させます。
頭蓋内動脈狭窄症 脳内の動脈が狭くなり血流が減少するため脳卒中のリスクが高まります。カテーテルを用いて狭窄部位にステントを挿入して血流を改善するステント留置術やバルーン血管形成術が一般的です。
頸動脈狭窄 脳に血液を送る首の頸動脈が動脈硬化などで狭くなり、脳への血流が低下する状態です。血栓が剥がれると脳梗塞を引き起こすことがあります。薬物療法やステント留置術が行われます。

カテーテル治療の種類

脳血管治療のカテーテル治療とは、カテーテルを足の付け根や腕の血管から挿入し、脳の病変まで進めて行う低侵襲な治療法です。

コイル塞栓術 未破裂脳動脈瘤の中にコイルを詰め血流を遮断することで、くも膜下出血を防ぎます。
経皮的脳血管形成術 頸動脈の血管がプラークなどにより狭窄すると、脳への血流が低下し脳卒中の原因となることがあります。
ステント留置やバルーン血管形成術で、狭窄部を押し広げて血流を改善し、脳卒中のリスクを減少させることを目的としています。
機械的血栓回収療法 急性脳梗塞の治療法の一つで、特に大きな動脈が閉塞した場合に行われます。ステントリトリーバーや吸引カテーテルなどのデバイスを用いて血栓を取り除き、血流を回復させます。

脳神経外科