間欠性跛行とは

腰部脊柱管狭窄症では、背骨の中の神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されています。

歩いたり立ったりしていると、神経への血流が不足してしまい、腰や足に痛み・しびれが出て長く歩けなくなります。
しかし、椅子に座ったり前かがみになったりして休むと、圧迫が一時的にやわらぎ、血流が改善するため症状が軽くなり、再び歩けるようになります。

この「歩いては休み、また歩ける」を繰り返す状態を「間欠性跛行（かんけつせいはこう）」と呼び、腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状のひとつです。

症状が進行すると、歩くだけでなく、台所に立っているなど日常のちょっとした動作でも腰や足にしびれや痛みが出て、長く立っていられなくなることがあります。

また、似たような症状は「閉塞性動脈硬化症」という足の血管の病気でも起こります。この場合は、動脈硬化によって血液の流れが悪くなり、歩行時に足の痛みやしびれが出現します。腰部脊柱管狭窄症によるものか、血管の病気によるものかを正しく見分けることが大切です。

治療方法

腰部脊柱管狭窄症の治療は、まず保存療法（薬、神経ブロック注射、リハビリテーションなど）から行います。しかし、神経が物理的に圧迫されているため、保存療法で十分な改善が得られない場合があります。

症状の程度や脊柱管の狭窄の度合いよって治療方針は異なります。日常生活にそれほど支障がなく、歩くと少し痛みが出る程度という場合には、 薬やリハビリで経過をみます。

反対に、数メートル歩いただけで痛みが強くなる、立っているだけでつらい、もっと自由に外出や趣味を楽しみたい 、このような場合には手術を検討します。

全内視鏡下脊椎手術（FESS）

当院では内視鏡を用いた低侵襲手術を積極的に行っています。内視鏡を挿入して脊柱管を圧迫している椎弓や黄色靭帯の一部を切除し、神経の通り道を広げます。

脊柱管狭窄症は複数箇所に起こることも多く、当院ではまず神経ブロック注射で原因となる場所を特定してから手術を行います。

直径7mmほどの細い内視鏡を用いた全内視鏡下脊椎手術（FESS）は、傷口が小さく、痛みや入院期間が少なく済むのが特徴です。高齢の方でも受けやすい手術方法であり、早期の社会復帰が期待できます。

腰部脊柱管狭窄症の注意点

腰部脊柱管狭窄症は、安静にすると痛みが和らぐことが多い一方で、高齢の方では安静が長く続くと生活の質（QOL）が低下し、手術やリハビリにも影響することがあります。できるだけ体を動かして筋力を保つことが、治療をスムーズに進めるために大切です。

「手術を受けると動けなくなるのでは」と心配される方も少なくありません。しかし実際には、動けなくなる原因の多くは“我慢を続けて神経が傷ついてしまったこと”によるものです。脊椎内視鏡下手術で神経の圧迫を取り除くことは可能ですが、一度傷んでしまった神経そのものを元に戻すことはできません。だからこそ、症状が強くなる前に受診し、適切な治療を受けることが重要です。

足の痛みやしびれでお困りの方は、どうぞお早めにご相談ください。