大腸のはじまりの部分(盲腸と呼ばれます)より出た突起で紐状の臓器です。
虫垂炎はここに細菌感染がおこることにより虫垂が腫れ炎症を起こすことにより腹痛や発熱などの症状をきたす病気です。さらに病状が進むと腹部全体に炎症がおよびいわゆる腹膜炎の状態になります。
症状は、さまざまな形で現れますが、典型的なものは当初胃のあたりしだいに右下腹部に移動集中してくることが多く見られます。前述の腹膜炎にいたると、腹部の激痛に伴い発熱や、腸管の麻痺などによる強い腹部の張りも出ます。
虫垂炎の診断はこれらの御自身の症状に加え、触診と言って我々がおなかを触ることで多くの場合診断がつきます。しかしながら典型的でない診断困難な方も多くいらっしゃいますので血液検査で白血球数の増加、CRP高値を確認し腹部超音波検査やCT検査で虫垂の腫れを確認するなどして最終診断とします。
治療は①絶食により腸の安静を保ち抗生剤で菌を殺す治療と②炎症の原因である虫垂自体を切除する手術療法があります。ごく初期の虫垂炎の場合は①の方法で改善することもありますが、虫垂の炎症が強く腹膜炎を起こしている場合や虫垂自体が穿孔を起こしている時には手術療法が必要となります。
虫垂炎の手術には腹腔鏡手術と開腹手術があります。
腹腔鏡手術は腹腔内の膿が原因となる創感染が開腹に比べて少なく、傷が小さく目立たない整容的に優れている、傷の痛みが少ないという利点があり、入院期間が4~5日と短縮できる利点があります。
開腹手術は腹腔鏡手術に比べ創が大きいため傷の痛みが強いため腹腔鏡手術より入院期間が長くなる事が多くあります。
重症例の多くはお腹の中に貯まる膿を抜く目的でドレーンという管が入ることがあります。
また極まれですが虫垂と腸管が炎症のため一塊となった場合、回盲部切除術(虫垂を含めた大腸を切除しつなぐ)を行う場合もあります。
当院では患者様の重症度に合わせながら腹腔鏡手術を行なっています。
手術は安全に行なわれますが極まれに合併症の生じることがあります。
年齢的な体の変化などから、今回の術式とは関係なく、偶発的におこるものとして一般に肺炎、心筋梗塞、脳梗塞、肺梗塞、術後せん妄などがあげられます。
心臓の障害(狭心症、心筋梗塞、不整脈など)や肺の障害(肺炎、肺梗塞など)、腎臓の障害(腎不全など)、脳血管障害(脳出血、脳梗塞)、肝障害(薬剤性肝障害)などの内臓障害と特異体質で起きるようなもの(薬剤アレルギー、悪性高熱症など)、深部静脈血栓症などがあります。その他感染症(創部の感染、腹腔内膿瘍、腸炎、肺炎、尿路感染、ガス壊疽、敗血症など)も手術に関して発症することがあります。
以上お話しした以外にも極まれですが年齢や今までかかった病気により予期できないような合併症が生じることもあります。
その際も患者さま方に速やかに状況を説明し迅速な対応をいたします。
これらの手技を行うにあったて、痛み止めなしで行なう事は不可能であるため、この痛みを感じなくするため麻酔を行ないます。
一般的に、腰から針を刺す腰椎麻酔か、背中にチューブを入れる硬膜外麻酔で行ないます。また虫垂炎がひどく大きく開腹する場合や内服薬(抗凝固剤)などによっては全身麻酔となることもあります。
手術終了時には麻酔薬を減量して目を覚ますようにしますが、覚醒が不良の場合には挿管したまま病室に戻り、時間をかけて麻酔を覚ます事があります。
手術直後には点滴以外にも、酸素マスク、胃管、心電図、血圧計、酸素飽和モニター、ドレーン、尿道バルーンなどが体につながった状態で病室(観察室)に戻ります。
入院期間は腹腔鏡手術で5日程、開腹手術の場合は7日間から10日以上と重症度によって様々です。
虫垂炎手術について御理解いただけましたでしょうか。
患者様が安心して治療を受けて頂けるようスタッフ一同全力を尽くします。
不明な点がある場合連絡頂ければお答えいたします。
東戸塚記念病院外科をよろしくお願いいたします。
東戸塚記念病院
神奈川県横浜市戸塚区品濃町548-7
外科部長 松本 匡史
連絡先045-825-2111