厚生労働省は2012年7月に日本人の平均寿命を発表しました。男性の平均寿命は79.44年、女性は85.90年であり、男女ともに09年から10年にかけても減少しており、2年連続で平均寿命が減少しました。それでも日本は平均寿命が世界トップレベルの長寿大国です。さていつまでも元気で長生きしたいと誰もが望んでいます。でも長寿者には認知症や寝たきりなど、日常生活に支障のある人も含まれています。こうした中、いま「健康寿命」という言葉が注目を集めています。健康寿命とは一生のうち、健康で支障なく日常の生活を送れる期間のことです。この平均寿命と健康寿命の差は男性では約9年、女性では13年であります。
65歳以上の人が総人口に占める割合のことを“高齢化率”といいますが、21%を超えると「超高齢社会」ということになります。日本は2007年(平成19年)(21.5%)に超高齢社会となりました。高齢化になると、高齢者の一人暮らしも増えてきます。こうなるとなるべく運動器を正常に保ち、介護を必要としない健康な体を維持する、つまり健康寿命を延ばすことが大切となります。そこで必要になるのは整形外科医ということになります。
整形外科医の守備範囲
整形外科とは、人体の運動器の病気や外傷(ケガ)を取り扱います。背骨・骨盤・手・足など、全身の運動器を造りあげている、骨・関節・筋肉・靭帯・腱・脊髄・神経の病気、外傷(ケガ)による損傷、加齢による障害、手足などの先天性疾患(生まれつきの奇形など)を治療します。
1できるだけ運動機能を、元通りにする(運動機能回復)
整形外科治療は、単に病気やケガを治すだけでなく、運動機能を元に回復させることを目的とします。不幸にして、運動機能の回復が十分に得られなかったとしても、残った機能を最大限に活用して、元の状態に出来るだけ近く機能を回復させることも、整形外科の大きな役割です。この際リハビリテーションとの協力が必要なこともあります。
2痛みをとること
運動機能の障害だけでなく、痛みを主とする疾患(俗に神経痛・リウマチなどと言われる病気)の治療を行なうのも、整形外科の主要な仕事です。
3整形外科の治療方法(保存的治療と手術的治療)
整形外科の治療は手術による場合だけでなく、手術をしない保存的な治療も多く行なわれます。整形外科の手術には、さまざまな種類があります。例えば、次のような手術があります。脊髄・脊椎に対する手術・神経の手術・腱の手術・骨の手術(骨接合術など)・関節の手術(人工関節置換術など)等々があり、時には切断された指や手足などの再接合術も行なわれることがあります。
当院では去年、整形外科手術が1,000件を超えました。
手術は具体的には骨折(四肢、骨盤、脊椎など)の治療や神経、腱縫合、血管吻合、人工関節(股関節、膝関節、肘関節など)、脊椎手術、関節鏡を行っており、ほぼすべての整形外科疾患を取り扱っております。当院では同種骨移植を人工関節や脊椎固定術に対して施行しており、手術時間の短縮や術後におこる採骨部の痛みの軽減を考慮しております。