股関節は、大腿骨の先端にあるボールの形をした大腿骨骨頭と、骨盤側で骨頭の受け皿になる深いお椀の形をした寛骨臼との組み合わせでできた、いわゆる球(きゅう)関節です。
臼蓋形成不全(股関節の骨盤側の受け皿=寛骨臼が浅い)や先天性股関節脱臼(赤ちゃんの時に股関節が脱臼する)で昔治療を受けた方は年齢とともに関節軟骨が少しずつ摩り減り、痛みが出現します。
痛みが軽いうちはお薬や運動療法などの保存療法を行いますが、痛みが日常生活の支障になると、手術療法が必要になります。
軟骨の摩り減りが少ない初期の段階であれば自分の骨を利用した手術(骨切り手術)で痛みが取れることがありますが、軟骨がなくなり進行期、末期の状態になると、人工股関節置換術が必要になります。
股関節を構成している大腿骨頭が壊死(骨の細胞が死んでしまうこと)を起こし、つぶれて骨頭が変形し、強い痛みを生じる病気です。
原因不明で起こる場合と大腿骨近位部骨折後、アルコールの多飲、全身性ループスエリテマトーデスなどの膠原病のための治療であるステロイド服用で起こす場合があります。
壊死範囲が小さければ経過観察か骨頭の骨切り術をして壊死のないところで体重を支える手術をしますが、骨頭の破壊が進めば人工股関節が必要になります。
股関節全体の変形が起こりやすいもう一つの病気は関節リウマチです。有病率は人口の0.8%で全身性の早老病であります。
この疾患では股関節の潤滑油にあたる関節液を作っている滑膜(かつまく)が炎症を起こして、周囲の軟骨や骨を浸食する病気です。
その治療は薬や注射などを使った全身的治療がおもに行われますが、壊れてしまった関節に対しては、破壊が高度で、症状が強い場合には、人工関節に入れ替える手術が行われます。
人工股関節の耐久性は、10年間ゆるみがなく、日常生活が過ごせる可能性が95%以上あり、長期に安定した手術法です。
また、最近術後20-30年経過された方の結果が報告されており、80%ぐらいの方は変わりなく使用出来ると言われています。
長期になると人工関節材料のすり減りが問題になることがありますが、近年の改良によりすり減りが非常に少ない材料が開発されており、長期耐久性がさらに向上すると思われます。
東戸塚記念病院ではリハビリテーション部と協力して、しっかりとしたリハビリメニューで取り組んでいます。また患者さまに日常生活の注意点などを十分学んでもらい退院後の脱臼を防止しています。
術後1日目より歩行練習を開始し全荷重を許可しております。ほとんどの方は術後2〜3週間で一本杖歩行が可能になります。退院は個人差がありますが4週以内に退院されています。