胆石症の手術について

胆石症について

胆石症とは

胆石症は狭義では胆嚢内結石(胆嚢内に石ができること)を指し、広義では胆道内の結石全体を意味する。ここでは狭義の胆石症、胆嚢結石症について説明致します。

胆石症の手術を受けられる方へ

種類

コレステロール結石と色素結石に分けられます。

  1. コレステロール結石
    胆汁中コレステロールの過飽和、結晶化、胆嚢収縮能の低下の3つが成因と考えられている。
  2. 色素結石(ビリルビン系石)
    1. 黒色石
      胆嚢で主に形成されるアモルファス化した黒色色素からなる結石。黒色色素はビリルビンあるいはビリルビンカルシウムの重合体であり種々の重金属を有している。
    2. ビリルビンカルシウム石
      細菌感染による不溶性ビリルビンカルシウム析出が関与していると考えられている。

頻度

人間ドックで胆石を指摘される頻度は約3~5%です。

危険因子

胆石のできやすい方は、太っている(Fatty)、40から50歳代(Forty-Fifty)、女性(Female)、たくさんお産をされた方(Fertile)であり、英語の頭文字をとって4Fと言われています。

症状

ほとんどは症状のない無症状胆石といわれています。無症状胆石から症状を呈する確率は年率1~2%、10年で20~30%程度といわれています。主な症状は腹痛です。結石が胆嚢頸部や胆嚢管に引っかかって胆嚢内圧が上昇するために起こる病態と考えられています。腹痛部位は心窩部(みぞおち)、右背部に多い。食後、特に夕食後、夜中、すなわち胆嚢の最大収縮期に起きやすい。脂肪分(脂っこい食事の)摂取との関連性も特徴的です。

胆石症の合併症

  • 急性胆嚢炎 :胆石が胆嚢管に嵌頓し閉塞をきたすことによって発生する。
  • 総胆管結石症:胆石が総胆管に嵌頓し閉塞を来すと、症状が発現する。
  • 急性胆管炎 :結石による胆管閉塞と胆汁中の細菌増殖により起こる。
  • 急性膵炎  :胆石が胆嚢から総胆管を通過することが原因で起こる。

診断方法

  1. 腹部超音波検査
    胆石を検出するうえでまず選択すべき診断法であり、95%診断がつきます。
  2. CT検査
    胆石症の質的診断に有用です。また、腹痛の原因となる、他の疾患の鑑別診断にも有用です。
  3. MRI検査 MRCP ( MR胆管膵管撮影)
    胆道疾患の①閉塞の有無、②閉塞部位、③結石の指摘、④悪性病変の指摘など、総合的診断に有用です。
  4. 上部内視鏡検査、下部内視鏡検査
    潰瘍や癌がないことをあらかじめ確認しておくことが必要です。

今回の症状の原因は胆石症と考えておりますが、まれに潰瘍や腫瘍の合併によることがありますので、病状によっては検査をお勧めしています。

治療について

  1. 胆嚢摘出術
    症状のある方には手術をお勧めいたします。
    胆石による腹痛は、ほとんどは自然に消失しますが、年間に患者の20〜40%で症状が再発し、1〜2%が胆嚢炎、総胆管結石症、胆管炎および胆石膵炎などの合併症を来します。このため、胆嚢摘出術の適応となります。
    当院では基本的に腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術を行っております。しかし全身状態により腹腔鏡手術を行えない場合があること、また術中所見により開腹術へ移行する場合があることをあらかじめご了承ください。
  2. 内科的胆石溶解療法
    X線透過性コレステロール胆石に対して、胆嚢機能が保たれていれば有効な場合があります。
  3. 体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)
    衝撃波(shock wave)により結石を破砕して経口溶解療法を行う。基本的には溶解療法を強化する方法です。当院では行っておりません。
図:胆石症の治療1
図:胆石症の治療2
図:胆石症の治療3

合併症について

手術(胆嚢摘出術)の術中合併症として、胆管損傷、出血、腸管損傷、肝損傷、などが挙げられます。術後合併症として、後出血、胆汁瘻(胆汁の漏れ)、創感染、呼吸器合併症、皮下気腫などが挙げられます。

胆嚢摘出後の消化吸収機能の明らかな低下を証明する報告はありません。日常診療上、胆嚢摘出後の患者に軟便・下痢などの消化器症状がみられることはあります。胆嚢摘出後1~2ヵ月に排便回数が増加し、排便習慣の変化がみられたものの、3カ月以降では、6%に間欠的な下痢がみられるのみと報告されています。

以上、胆嚢結石症に関して一般的な概略を説明いたしました。治療に関しては、それぞれ一人ひとりの病状、既往歴、合併疾患、年齢、体力を考慮し最適な方法を選択しなければならないと考えております。是非、病気をご自身でもしっかり理解していただき、納得したうえで治療を受けていただきたいと思います。ご不明な点があれば遠慮なく主治医にご相談ください。

尚、ここに記載した治療方針に対して、セカンドオピニオン(他の医師の意見)を聞きたいなどのご要望がございましたらお知らせください。紹介状を用意し資料の貸し出しを致します。

東戸塚記念病院
外科部長 松本 匡史

外科