人工関節の合併症

関節痛や歩行障害に悩む皆様に良質の医療を提供いたします。

人工関節の合併症

人工関節はメリットばかりではありません。手術を受ける場合は合併症に関して十分な理解が必要です。
次のような合併症が起こる可能性があります。また、合併症は手術自体による合併症であり、どこの施設でもおこる可能性があります。

主な合併症

1 深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)

血栓とは血管の中にできる血のかたまりです。 人工関節の手術の術中もしくは術後に、深部静脈に血栓が生じる深部静脈血栓症(DVT)が起こる場合があります。

血栓が生じると、脚のむくみや痛みなどが起こります。また、この血栓が静脈壁から遊離して肺動脈に詰まる場合があり、これは肺塞栓症(PE)と呼ばれ生命に関わることもあります。

肺塞栓症の発生率は約0.7%といわれています。深部静脈炎や血栓症の予防のため、圧迫包帯や弾性ストッキングで下肢の静脈の血流障害を予防したり、血液の凝固をふせぐ薬剤を用いたり、脚を自動的にマッサージする器械を用いたり、早期に脚の運動を開始するなどの方法がとられます。

2 神経麻痺

人工関節の手術を行うと、まれに神経麻痺が起こる場合があります。
神経麻痺の発生率は人工股関節手術をした人の0.6~3.4%に起こるといわれており、めったに起こらない合併症ですが、足の一部の感覚が失われたり、痛みがでたりして、筋力の回復に時間がかかってしまうため深刻な問題です。
しかし、多くの症例では徐々に回復し、術後1年程度で正常にまで回復すると言われています。

3 感染症

人工関節の手術では、細菌感染が起こることがあります。
感染には早期感染と晩期感染があり、早期感染は主に手術時の感染が原因と考えられています。

これに対し、手術後3ヶ月以上たっておこる晩期感染は、早期感染に比べ頻度は低いですが、体調をひどく崩したとき(エイズ、ガン、肝機能障害、糖尿病の悪化)などに起こることがあります。

感染は抗生物質などで治療できますが、深刻なときは人工関節の抜去が必要となる場合があります。
感染の起こる確率は0.3~3%といわれています。

4 骨折

人工関節を設置する際の骨折には、手術中に起こる骨折と手術をした後に起こる骨折の2種類があります。

手術をした後に起こる骨折は、通常転倒や事故などの衝撃により起きる場合が多く、骨折の頻度は約1%程度であると考えられています。
骨折後の治療法は経過観察や再手術などそれぞれの症例に適した方法が選択されます。

5 脱臼

人工股関節を入れたあと、もっとも起こりやすい合併症が脱臼です。

健康な股関節は周辺の筋肉によって守られているため、めったに脱臼しませんが手術のあとで周辺の筋肉が弱っているときには、脱臼が起こりやすくなります。
手術後に脱臼の起こる頻度は0.5~6%程度といわれています。

何よりも人工股関節の特性を理解して、日常生活において上手に付き合うためのトレーニングが必要です。

6 人工関節のゆるみ

細菌感染により骨の一部が溶けると、人工膝関節と骨との間にゆるみを生じることがあります。
また、人工膝関節の超高分子ポリエチレンや金属の摩耗粉(まもうふん)が生じ、この摩耗粉を細胞が取り込んで炎症を起こしたり、摩耗粉が人工関節と骨の隙間に侵入し骨が溶解すると人工関節にゆるみが生じることがあり、場合によっては人工関節を入れ替える手術が必要になります。

関節に大きな負荷のかかる運動や動作はできるだけ避けるようにしましょう。そして、最低でも1年に1回は定期検査を受けることをお勧めしています。

ゆるみ防止のためには、医師を含めた人工関節を提供する側のみならず、患者様側の理解と協力があってはじめて達成されるものといえます。

7 人工関節の破損

くり返しの大きな衝撃が加わったり、人工関節がガタついたり、バランスよく荷重できなかった場合に超高分子ポリエチレンや金属が異常に摩耗したり破損することがあります。
多くの摩耗粉が発生するので人工関節のゆるみも出ます。

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